私の先輩

まだ私が駆け出しの頃、
仕事を教えてくれた先輩がいました。

大変バイタリティのある方で
陽気でやんちゃで面倒見も良い方でした。

酒の席や昼食はよくおごってくれるし
いつも最新の製品を使ったり、
車なども時折買い換えていました。
携帯電話も頻繁に買い換える上
常にあちこちへかけていました。
ギャンブルもある程度豪快になさる方でした。

陽気な方ですので
いつも人が集まっていました。

無理もない話です。

学校を出たばかりの無邪気さから
私はその先輩を尊敬して
無我夢中で走っていました。

しばらくして
お金を貸して欲しい
といわれ、駆け出し社員としてはちょっと多い額を
貸しました。

尊敬する先輩ですので
貸したわけです。

後日何とか返済を受けましたが、
数年後転勤先にも貸して欲しいと連絡があったことがありました。

そのときは
「人間関係が壊れるから近い人の間の
 金の貸し借りはしない」
とお断りしました。

しばらくして、その先輩が
金銭面のトラブルが原因で退職金で借金を穴埋めし
社を去ったと聞きました。

周囲に多くの犠牲が出ました。

金銭面以外でも
長く人生に陰を落とされてしまった方もいらっしゃいます。

かつてその先輩の成長期の話を伺ったことがありますが、
今思えばそういうことだったのか
と分かります。

今も仕事を教えてくれた先輩として
悪く言うことはできません。

人間の良いところも悪いところも
身をもって教えてくれました。

今はその先輩の生死すら分かりません。

そのような方に吸い寄せられるのは
特に若い方が関心を持つのがよく分かります。
私自身の経験でもあるからです。

今私にできることは、
不幸な人を増やさないこと、
幸せに暮らせる人を増やすこと
かもしれません。